コンセプトからCanvasまで:Olivia Rodrigoの「drivers license」の場合

Olivia Rodrigoの「drivers license」のCanvas用アニメーションGIF画像
Timmhotep Aku / February 4, 2021

世界的ヒット曲の最高にクールなCanvasがSpotifyに登場。Oliviaの爆発的ヒットを支えた完ぺきなビジュアル制作について、Olivia Rodrigoのクリエイティブチームに話を聞きました。

Olivia Rodrigoは今、まさに運転席に座り、世界中をドライブに連れて行くかのように、音楽で人々を魅了しています。この17歳 (記事の執筆時点) のシンガーソングライターのシングル「drivers license」は、「トップソング ‑ グローバル」の週間チャートで3週連続1位を獲得し、Spotify史上最高の週間再生数を記録しました。また、この楽曲は米国におけるSpotifyでの1日の再生数が200万回を超え、「トップ50 ‑ アメリカ合衆国」プレイリストのトップを飾っただけでなく、世界でも1日の再生数が800万回を突破し、「トップ50 ‑ グローバル」プレイリストのトップに輝いています。しかもこれは「Billboard Hot 100」のシングルチャートのトップに初めて登場し、ホリデー曲以外での1日の最高再生数を記録するという快挙をすでに達成した後のことです。

このシングルの成功には、いくつもの要因があります。その1つ目は、青春時代の恋と別れを歌った、切なく共感性の高いキャッチーなポップソングであるということです。また、ディズニー (「ハイスクール・ミュージカル:ザ・ミュージカル」シリーズにニニ役で出演) で女優の卵として活躍したRodrigoには、すでにファンベースが存在していました。その他、ソーシャルメディアでの楽曲の拡散、テイラー・スウィフトやビリー・アイリッシュからの応援、ファンに響く歌詞に隠されたストーリーといったさまざまな要素が揃い、2021年の爆発的なヒットへとつながったのです。

Spotifyアプリでこの楽曲を再生すると、3つに並んだヴィンテージ風のカリフォルニア州の運転免許証がループ動画で表示されます。それぞれの免許証のなかでRodrigoが悲しい顔、笑顔、しかめっ面、物思いにふける顔といったさまざまな表情を交互に浮かべているアニメーション画像。これが「drivers license」のCanvasです。Rodrigo自身がアイデアを考えたこのCanvasもヒットを遂げ、リリース初週 (1月8~15日) にInstagramで合計243,000回もシェアされ、最初の3週間で閲覧数が5,000万回を突破しました。Spotifyのグローバルヒットのリーダーを務めるNed Monahanは、このような大成功はまれであることに触れ、「こうした爆発的な成功はめったにないことですが、『drivers license』には必要な要素が揃っていたのです」と説明しています。「これは、世界中の誰もが共感できる失恋や田舎の窮屈さを表現し、聴いた瞬間に引き込まれるようなすばらしい楽曲です。それに加え、Canvasを作成することでファンにこの楽曲のテーマ、Oliviaのビジョンや曲のストーリーを視覚的に伝えることができました。このことを考えると爆発的ヒットもうなずけます」

RodrigoのビジョンをCanvasで生き生きと伝えるため、RodrigoとInterscope/GeffenはアートディレクターのDina Hovsepianと、デザイナーのTim Barstenと協力しました。Hovsepianは、デザインのアプローチについて「ヴィンテージ風の免許証を表現することに取り組みました」と説明しています。「小さな傷があるように見せるスクラッチ効果のフィルターをいくつも重ね、色あせた感じの顔写真と消えかけた文字に仕上げました」(免許証には本当の誕生日が書かれているそうです)。Canvasのインスピレーションと活用方法についてさらに理解するため、Spotify for Artistsは、Canvasのデザインとアニメーションを担当したBarstenにその制作過程を尋ねました。

Spotify for Artists:このCanvasの制作過程において、Oliviaはどれほど大きな役割を果たしましたか?Oliviaのアイデアにはどのようなものがありましたか?

Tim Barsten :クリエイティブディレクションはOlivia Rodrigoが担ったと言っても過言ではありません。アートワークや元になった免許証のデザインは、シングルのグッズで使っていたものをレーベルが提供してくれました。さらに、Canvasで使った顔写真は、免許証の元の画像と置き換えてほしいというメモと一緒にOlivia自身から提供されたものです。Oliviaから「ハリーポッターのしゃべる肖像画をイメージして」と言われ、ピンとくるアイデアが浮かびました。Adobe After Effectsにアセットすべてを取り込んで、現在のデザインに仕上げました。

ハリーポッターからヒントを得たOlivia Rodrigoの運転免許証

ハリーポッターからヒントを得たOlivia Rodrigoの運転免許証

楽曲とその歌詞をCanvasで視覚的に表現するという点についてですが、Canvasフレーム内の3枚の免許証に挿入されている6つのループ画像は、Canvasのために特別に作成されたのですか?撮影時のディレクションはどのようなものでしたか?どのような感情やムードを表現しましたか?

楽曲のコンセプトを伝えるため、Oliviaは終わりを迎えた恋愛のさまざまな段階を表現したいと思っていました。この楽曲のCanvasで、失恋し、相手を許し、再び前を向けるようになるまでの段階を3枚の免許証のなかの6つの画像で表現したいと考えていたんです。

Canvasとシングルのアートワークは異なるものであるべきだと思っていましたか?それとも連携しているべきだと思っていましたか?

このCanvasがシングルのアートワークやミュージックビデオと違うところが気に入っています。Canvasは楽曲のクリエイティブを補うものとして、楽曲のストーリーを別の角度から伝えることができます。とはいえ、Canvasのコンセプトがアートワークやミュージックビデオと異なるとしても、同じ世界観を共有する必要はあります。そのため、それらの要素をさりげなく取り入れて、ビジュアルに一体感を持たせました。たとえば、背景に薄紫色のフレアをいくらか挿入し、グレインオーバーレイを追加することで、フィルム撮影されたミュージックビデオを再現しました。また、アートワークの破れた紙とノスタルジックな雰囲気をヒントにして、ヴィンテージカラーを適用し、Canvas全体が少し古びた感じになるよう加工し、レトロな雰囲気に仕上げました。

コンセプトの立ち上げからCanvasの完成まで、どのくらいの期間を要しましたか?何度も修正が必要でしたか?

2020年12月の2週目から最初のコンセプトに取りかかりました。その後数週は、さまざまなコンセプトやバージョンをあれこれと考え、ようやく現在のバージョンに辿り着きました。最終的には、12月の2週目にもともと考えていたコンセプトに落ち着いたんです。

はじめに候補になっていた「drivers license」のCanvas

はじめに候補になっていた「drivers license」のCanvas

却下されたアイデアにはどんなものがありましたか?

いくつかの異なるコンセプトを練っていました。そのうちの一つでは、オリジナルのアートワークを採用し、縦方向のCanvasで古びた感じの画像を作成しました。それから、異なるレイヤに分け、さまざまなタイプのグレイン、ダスト、フレア、スキャンライン、フィルムマットを各レイヤに適用し、それぞれのレイヤに異なる動きを加えました。でも結局、今皆さんが見ているコンセプトが一番魅力的でした。

制作した作品が、無数のファンに閲覧され、シェアされていることを知ると、どんな気持ちになりますか?CanvasがInstagramストーリーズでシェアされていることに気付いていましたか?

SpotifyやInstagramでこんなに多くの人に見てもらえる作品に携わることができて、最高の気分です。世界中でシェアされている様子を見ると嬉しくなります。

Spotify for Artistsは、あなたがファンベースを拡大し、目標を達成していけるようサポートします。

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