ストーリー
売れるグッズを制作してリスナーの心をつかもう
最近LAで開催されたCo.Labイベントで、業界の専門家を招待し、グッズについてさまざまな視点から話し合ってもらいました。その結論は、グッズはあなたのアートの一部であり、収益を得るための手段でもあるということです。
ホリデーシーズンは、グッズ販売を本格的に検討するのにぴったりの時期です。アーティストがグッズを制作し販売する際には、熱心なリスナーと楽しくクリエイティブにつながることだけではなく、ビジネスの成功を目指して取り組む必要があります。ライブイベントのコマースプラットフォームatVenuの社長兼共同創設者で、10月に行われたSpotify For ArtistsのCo.Labイベントでパネルディスカッションに参加したBen Brannenは、「現代では、いいね!の数、写真の投稿数、再生数といったデジタルフットプリントばかりに価値を置きがちです。でも、本来は、ライブに実際に足を運び、Tシャツ1枚のために喜んで30ドルを支払ってくれるリスナーの存在にこそ注目すべきなんです」と語ります。「グッズの売り上げを追う際には、『ただTシャツを売っているだけ』とは考えないでください」とBrannenはアドバイスします。「これは、アーティストとしての成長度を測る指標なんです」
定番のTシャツから、バブルヘッド人形のような個性的アイテムまで、多種多様なグッズをユニークかつ戦略的に制作してみましょう。グッズは、パーソナライズしやすいうえ、収益化の手軽な手段でもあるため、アーティストがリスナーとの絆を築くのに欠かせない要素です。Co.Labの司会者であり、dublabの共同創設者兼クリエイティブディレクターでもあるMark “Frosty” McNeillは、「リスナーはアーティストの分身を手に入れるような気持ちでグッズを購入するものです」と言います。
イベントでは、パネリストのMitra Khayyam (Waylon Jenningsのライセンスマネージャーで、グッズブランドMidnight Riderの創設者)、Lauren Kessler (ザ・チェインスモーカーズやTrippie Reddと一緒に仕事をした経験もあるクリエイティブディレクター)、Ian Stoufer (Shepherd FaireyのStudio Number Oneのアートディレクター) が、デザインの開始から完成までのプロセスや、グッズで収益を上げるためにチェックすべき数値など、グッズ販売の成功に欠かせない情報を、グループプレゼンテーションや出席アーティストとの1対1のやり取りで詳しくシェアしてくれました。ここでは、イベントに出席できなかった皆さんのために、重要なポイントをいくつかご紹介します。
ブランディングを確立しよう。
ファッション業界と音楽業界の結びつきがますます強くなるにつれ、ブランディングの概念もまったく新しいものとなっています。Kesslerは、「ファンは、ただ好きなアーティストの顔が描かれたシャツを着るのではなく、そのアーティスのセンスそのものを身に着けることができるようになりました」と語り、ファッションと音楽を融合させた良い例としてジャスティン・ビーバーの Purpose ツアーのコレクションを挙げました。ジャスティン・ビーバーのブランドのレザージャケット、チェック柄のキルト、フランネルシャツは、高級デパートのバーニーズで販売され、誰でも (195~1695ドルの余裕があれば) ビーバーのファッションを真似できるようになったのです。
Kesslerは、ブランドのアイデンティティをブレインストーミングするために、次のような点を考えてみるように勧めます。あなたが音楽で表現したいことはなんですか?どのような人たちにインスパイアされていますか?リスナーの記憶に残したいのはどんなことですか?リスナーにどんな気持ちになってほしいですか?質問の答えが浮かびにくい場合、Kellserは別の方法として、キーワードのマインドマップを作ることも提案しています。「自分の名前を中央に書いてから、自分の価値、感情、強み、リスナー、憧れの存在やインスピレーションの源を書き留めていきます」
ブランドアイデンティティをグッズの形で表現する際には、ビジュアルのコンセプトを固めておくことが大切です。Kesslerは、カニエ・ウェストがシンプルなデザイン、一貫した色使い、最小限のタイポグラフィで、自身のメインテーマを際立たせていることを例に挙げます。ブランドアイデンティティの基本的な情報に基づいて、デザインについて調査してみてください。Ian Stouferのおすすめは、調査で見つけた視覚的なインスピレーションを集めて、Pinterestのボードを作成することです。同じように、Kesslerも、ブランドのアイデンティティを定めるのに、画像、フォント、色、テクスチャを組み合わせたムードボードの作成が役立つと言います。アイデアがまとまってきたら、次はデザインに取り掛かりましょう。
グッズを制作しよう。
プロセスで一番の課題は、どんなグッズを制作すればよいかです。Ben Brannenは、販売データに基づいて、「一つ言えることは、黒いシャツは売れるということです」とアドバイスします。ツアーTシャツも欠かせません。Brannenは、「すべてのツアーで言えることですが、黒いTシャツの中でも特にツアーTシャツが最も売れるんです」と続けています。また、ストレートクルーネックや長袖Tシャツとは対照的な商品として、プルオーバーパーカー (特にヒップホップリスナー向け)、ジップアップパーカー、ラグランTシャツなども人気です。帽子の人気も衰えません。ただし、グッズの種類は増やしすぎないように。「アイテムを増やしたからといって売り上げが増えるわけではありません。実際には、コストがかさんでしまうんです」とBrannenは言います。
平均して、アーティストの売り上げの70%は5種類のグッズで占められています。商品のラインナップを絞れば、販売がよりスムーズになり、取引にかかる時間が短くなるため、売り上げも伸びるのです。加えて、カスタマイズも取り入れるべきトレンドの一つと言えます。「パーソナライズ性の高い商品を提供するのもいいでしょう。世界に1枚だけのアイテムになりますからね」とStouferは語ります。
Mitra Khayyamは、別の視点から考えてみるようアドバイスしています。「とにかくグッズを用意すればいいというものではありません。リスナーとのつながりを強める、上質でユニークなグッズを販売できているかどうかに注目しましょう」Midnight Riderは、昔ながらのカントリーアーティストのグッズとして、アメリカ製の高品質な商品を提供するブランドです。同ブランドのクリエイティブディレクターKhayyamは、アーティストに、生地の調達から工場とのやり取りまで、グッズ制作のプロセスに最初から最後まで関わることを勧めています。
協力して制作しよう。
どのような形であれ、グッズのデザインと制作を成功させるには、ほかの人との共同作業が欠かせません。しかし、誰かと一緒に作業するのは必ずしも簡単なことではないでしょう。Stouferは、行き違いや土壇場で変更が生じる可能性を考えて、きちんと契約を結ぶようアドバイスしています。「成果物がどのような形で、どの期限までに完成するかが明確に定められた契約書を参照できるようにしておけば、それを頼りにプロセスをスムーズに進められます」
ほかの人と一緒にデザインする場合は、クリエイティブかつ大胆に、さまざまなことを試してみましょう。「試行錯誤を繰り返しましょう」とStouferは言います。リブランディングを目指すクライアントと働く場合について、共にデザインに取り組むStouferとその同僚は、「まず、従来のブランディングにとても近いデザインを提示してから、極端に方向性の違うものを見てもらいます。それから、その間を取ったデザインを検討していくのです」と語っています。多くの場合、クライアントは両者の中間を採用したがるようです。
グッズのマーケティング戦略を立てよう。
グッズの制作が完了したら、クリエイティブなマーケティング戦略と、リスナーへの販売方法を考えましょう。Kesslerは、「すべてのステップが関連し合っていることを忘れないようにしましょう」と言います。「商品の価値を高め、ユニークな売り出し方と魅力的なコンテンツを実現するために費やす時間は、すべてビジネスの一部なんです。そのようなプロセスは、売り上げだけでなく認知度の向上にも役立ちます」グッズのクリエイティブなマーケティング方法には、限定版のリリースやバンドル販売、ポップアップストアの出店、一貫したテーマで革新的なストーリーテリングを展開する商品カタログや動画などが挙げられます。
グッズを無料で提供するのは良い方法なのでしょうか。BrannenもKhayyamも、グッズの無料プレゼントについては否定的です。「予算を考慮する必要があります。あなたは、アーティスト活動で生計を立てているのです。グッズもその一環に含まれます。グッズのシャツにお金を払いたがらないリスナーは、そのアイテムに価値がないと言っているようなものでしょう」とKhayyamは説明します。
グッズを販売しよう。
グッズを販売するにあたって最も大切なのは、売り上げをしっかり把握することです。「すべてのデータをきちんと追跡していなければ、何が売れているのかもわかりません」とBrannenは言います。マーケティングとプロモーションはブランド認知度を高める優れた方法ですが、リスナー層の成長の度合いを実際に確かめるには、グッズの売り上げに注目する必要があります。
Brannenによれば、売り上げの把握に最も役立つ指標は平均客単価です。つまり、会場の収容人数から計算して、1回のライブにつきリスナー1人あたりからどれほどの収益を得ればいいのかということです。定員500人以下の会場の場合、アーティストが必要とする平均客単価は5.18ドルで、定員が500~1,000人に増えた場合は4.83ドルです。1,000~3,000人の規模では4.40ドル、定員が10,000人を超える会場では4.33ドルになります。これらの数値を基に計算することで、グッズ販売で実際に収益が発生しているかどうかを確かめましょう。
Mitra Khayyamは、売り上げの追跡について、リスナーや顧客の意見によく耳を傾けることの大切さをつけ加えています。Khayyamによれば、これには、SNSのデータを分析して、自分のフォロワーがどんなユーザーなのかに注目することが含まれます。いいね!したり、ストーリーにコメントしたり、ライブに参加したりしているユーザーについて掘り下げましょう。男性ですか?女性ですか?どこに住んでいますか?どんなことを投稿していますか?どんなタグを付けていますか?つまり、市場調査がとても重要なのです。
「自分が心を込めて制作したグッズで良い反応が得られないと、心が折れそうになるかもしれません」とKhayyamは語ります。「でも結局のところ、これはビジネスなのです。売れ残ったTシャツの在庫を抱えてがっかりするか、自分らしく活動しながら収益を上げるかはあなた次第です」
-Khalila Douze
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