グッズは、アーティストのストーリーとその果てしない魅力について伝えるものです。
リスナーは自然にあなたの音楽を好きになります。でも、グッズの戦略はスマートかつクリエイティブに展開する必要があります。その戦略によって、ファンベースとのつながりを維持し、関心を持っているリスナーに熱いファンがいることを宣伝できるからです。また、ブランドを強化し、収益を向上させることもできます。グッズにできるものは、Tシャツ、マグカップ、可動フィギュア、ベープペン、棺桶など無限にあります。また、グッズによって、あなたのバンドのアイデンティティ、音楽ジャンルを明確にし、ファンとつながることができるのです。
強固なチーム (該当する場合はブランドとマネージメント) は、優れたグッズを制作するだけでなく、リピーターを獲得できるような魅力的なブランドとロイヤリティを構築します。ファンが新しいグッズのリリースを待ち構えて、こぞって購入してくれるような状況を目指すのです。リピート販売で重要な要素は、音楽のマーケティングと同じく、まず適切なポジショニングを行うことです。
目標を明確にする
グッズ販売は、ツアーやレコーディングにかかった費用を埋め合わせるための貴重な収入源となります。とはいえ、収益ばかりに注目しすぎると、重要なポイントを見逃してしまいます。投資の成果の多くは数字だけでは測れないのです。Tシャツやピンは、ファンに身につけてもらうことで、ブランド名の認知度を高めることができるので、優れたマーケティングツールと言えます。
適切な値段設定は不可欠です。その他の要素 (コスト、需要、利用可能状況など) は等しく、ロジックはシンプルです。グッズの値段を下げると利益は少なくなりますが、高価な商品よりも売れやすくなります。つまり、より多くの人があなたのブランドのTシャツを着て、街中を歩いてくれるということです。Cold Cuts Merchandiseを運営し、Quicksand、The Hold Steady、Code Orangeといったアーティストに協力しているJohn Bowesもこの点に同意しています。「ブランドを構築することが必要で、プロモーションの費用が気になる場合、新しいバンドにとって重要なのは、知名度を上げ、『あちこちで見かけるロゴだ』と思ってもらうことです」
グッズを選ぶ前にオーディエンスを知る
目標を設定したら、Spotify for Artistsアプリといったツールを使って、ファン層の特徴や、ファンが魅力的だと感じそうなグッズの価格やグッズの種類を見極めましょう。たとえば、あなたがシンガーソングライターだとして、ファンベースの大半が25歳未満であれば、公式ライセンスの棺桶はなかなか売れないでしょう。ファンが使える予算や、ファンの熱狂度を把握することも役立ちます。ファンは、コレクション性の高い低価格のカセットを購入する傾向がありますか?それとも、ファンはレコードのような時間と共に価値が上昇する高額商品に関心がありますか?あなたのファンは、受動的ですか?それとも、熱心なコレクターでしょうか?自分の仲間や、類似するファン層をもつアーティストが販売しているグッズの種類を観察することは、効率的に販売する方法やファンに響くグッズを見極めるのに役立ちます。
グッズのターゲティングを効果的に行うベストな方法がわかったら、アイデアを洗練し、オーディエンスにとって魅力的なグッズにする方法を考えます。ロゴ入りのTシャツはどこにでもあるので、ひときわ目を引くデザインにしたいと思うことでしょう。効果的なグッズのラインとは、魅力的でユニークなものです。「最近のファンは賢く、よく調査します」とBarking IronsのMichael Casarellaは説明しています。Barking Ironsはハイエンドなコレクショングッズを扱うグッズ専門会社で、ボブ・ディラン、キングス・オブ・レオン、ビリー・ジョエル、ジョン・レノンといったアーティストのグッズを扱っています。「ファンは、アルバムジャケットが日付と一緒に背中にプリントされただけのTシャツとは異なり、グッズに込められたちょっとしたアイデアや創造性に気づきます。退屈なグッズにならないようにする方法はいくらでもあるんです」
Bowesはこの点に同意し、次のように補足しています。「大成功を収めるバンドは、自分たちが何をしたいのかについて総合的なビジョンをもっています。歌詞、アルバムアート、ロゴ、バンドメンバーの人柄、そのすべてが文字通り1つのストーリーとしてつながっている必要があるのです」
需要、供給、コストのベストバランス
オーディエンスが求めるニッチな分野を見つけたら、注目を集めるグッズにする方法について理解を深め、いくつかの選択肢を考えます。理想とするのは、ファンがグッズ販売セクションでどれを買おうか迷ってしまい、思わず買いすぎてしまうような魅力的なラインナップです。Barking Ironsでは最近、低価格アイテムをグッズに含めるようになりましたが、当初から提供しているプレミアムグッズは、ポジショニングの観点からも強いインパクトを与えています。「ベーシックなシャツも提供していますが、プレミアム製品を求めるファンに主な焦点を当ててグッズを制作しています」と、Casarellaは言っています。「一般に、グッズはグラフィックがなければ、とても平凡です。私たちは、ほかのシャツとは違う、ちょっと工夫されたシャツを作りたいと思っています」
品質は重要ですが、トレンドに合っていること、さらにはオーディエンスが求めるものを先回りして提供することも重要です。「父親の時代に流行った帽子の人気が今復活しているように、スタイルは流行り廃りを繰り返します。必要なことは、トレンドに流されるのではなく、ほかのバンドもこぞって類似のグッズアイテムを作りたくなるような、画期的なグッズを生み出すことです」とBowesは説明します。
数量限定アイテムは、限られたスタートアップコストで制作できるだけでなく、ファンに緊急感をもたせ、グッズを今すぐ手に入れたいという気持ちを高めることができます。高い評価を得ているインディーレーベルのSouthern Lordは、sunn o))) やPower Tripなどのアーティストが所属しており、常に魅力的な製品を制作しています。Southern Lordでは、ポップカルチャーでメタルが成長を遂げたことで需要が高まり、長年姿を消していた多くのエディションにも注目が集まっています。とはいえ、当初は人為的にサブエコノミーを作りだす意図はあまりなく、経済的な制約の中で活動することに重点を置いていたのです。
「私は、アルバムはスペシャリティアイテムだと思っています。デジタルでも、ストリーミングやCDでも音楽を聴くことができるのです。ですから、予算を控えめに見積もりながら、できる限りベストな製品に仕上げられるようにしています」とSouthern Lordの責任者であり、sunn o))) を結成したGreg Andersonは説明しています。「私にとって、それは音楽以上を意味するものです」Discogsでの価格が示すとおり、Southern Lordのリリースの需要が驚異的に高まっていることは注目に値します。
つまり、グッズ販売は、クリエイティビティ、忍耐力、意志をもって臨めば、収益源やファンベースを活性化する要素として大きな可能性をもつものです。「これがデジタル時代であり、音楽ストリーミングの時代なのです。レコードやメディア、そして音楽の触覚的な面の大部分が失われてきました」とCasarellaは主張します。「アーティストには、グッズを音楽の延長線として考えるように言っています。グッズもファンを夢中にするものです。そしてそれは、Barking Ironsと連携し、目指していることでもあります。アーティストの世界が広がり、深まるようなストーリーを伝えるのです」
—Fred Pessaro